2014-01-01から1年間の記事一覧

テンスとアスペクト

高層ビルのエレベーターが上下しながら営む様々な陰謀。都会の目論見は人の本質を覆い隠す。真偽は何時もコートの中で、膨らんでは痩せ細る。些細な呟き、僅かな視線の逸らし方、行間にある無言の圧力。そうして目が覚めた午前5時には、ささやかな失敗と安心…

アメ ト サダメ

【失語症】● 何を尽くしても信じて貰えない時に陥ってしまう事。● 沈黙。【失明】● 私が抱えている爆弾。● 色の無い世界。そして、明けない儘でも良いと思えるような夜の帳を手繰り寄せる。もしも私が光を失っても、言葉は残ると思っていた。しかし言葉でも…

ginger ale

いつからか、境界線のあっち側に行った気がしていた。それを私は辿り着くべき場であり、辿り着いた場だとも思っていた。社交辞令的世界観は、私にあどけなさを失わせようとしていた。しかし未だ、幼さと成熟の狭間でくすぶっている自分がいる。次々に弾ける…

7秒のシナリオ

思わず泣きそうな日は、家を出る時に伊達メガネをかける。すると世界はフィルターを通して私から一歩遠ざかったようで、無感覚を装える。本当は今のうちに見ておきたいものがたくさんあって、色彩豊かな心情は胸を弾ませるけれど、いつも肝心なものはサーチ…

水風船

明け方の水の中は、何の音も聞こえなかった。だから、君が口走った言葉も聞き取れなかったんだ。思春期と反抗期の間喧騒と静寂の間安定と不安定の間平穏と刺激の間期待と諦めの間柔らかさと硬さの間気丈さと儚さの間得る前と失う前の間自発的と自然発生的の…

エルミタージュの900日。

人は、何を得た時に心が満たされるのか。1941年のサンクトペテルブルクを想いながら、こんな疑問を持つ。「900日の包囲」は悲惨な史実として知られている。兵糧攻めにあい、平常心と理性を失う瀬戸際を行き来する900日は想像を絶する過酷さだったであろう。…

flow

地下鉄に反射する蛍光灯。凍えたか細い手が、空を切って行く。否応なく課せられる現実と。知る術など無い真実に。如何足掻いても得られぬ信頼が有るなら、私が重ねて来た言葉の意義は何処に有るのか。構築はかくも難しく、積み木崩しなどしたく無いのに。表…

the free birdcage

枠に押し込まれる事に、窮屈さを感じるようになった。人生は選択の連続でたまに混乱してしまうこともあるけれど、最終的には本心に従ってこそ見えてくるものがあると思う。そうして見つけたブレない軸があれば、多少の迷いや鬱屈も越えていける気がする。型…

10月、雨、その証。

ある作家と音楽家の対談を読んでいたら興味深い一言に出会った。『耳が良くないと、面白い文章は書けない』表現力や描写、テーマとは別に、文章には心地良いリズムが必要だと。そのリズム、流れがないと物語は前に進んでいかず、そこに書かれていることも読…

不完全な裏の裏

ブログを始めて一周年。誰が読んでくれているのか、全くわからないまま書き続けた。インターネットは不特定多数の人が閲覧できる。そこにはメリットもデメリットもあって、この1年は様子を見ながらの記事だった。自分の揺れ動く感情については思いきり書いて…

meeting point

いらない靴を処分した。ブルーレイレコーダーの中に溜まっていたデータを整理した。化石のように眠っていた本やCDを処分した。英字新聞の購読をやめた。進展のないものを追うこともやめた。新しい勉強を始めた。運動も始めた。ラヴェルからショパンに移行し…

present for…

プレゼントは、贈る時も頂く時も迷う。好みの違いもあるし、気遣いなのか思いやりなのか恐縮してしまうこともある。けれど『時間』とは、たいてい誰しもが大切にしているもののひとつであると思う。仕事の時間。食事の時間。休む時間。はしゃぐ時間。ひとり…

パラダイムシフト

アメリカの動物学者エドワード・S・モースは明治時代に来日し、東京大学の教授として大学の社会的確立に尽力した。彼らのように明治維新に貢献した外国人たちは、急激な近代化による日本の文化や伝統の消滅を危惧していた。欧米の産業革命と同じことが起こる…

夜の言葉探し1800

旅行先で購入した写真誌がお気に入りだ。静けさを求めるような夜に、よく眺めている。私は気に入ったものを何回も見る傾向がある。気に入った写真、気に入った映画、気に入った曲。執拗かもしれないが、毎回違った観点や気分を味わえるという意味では洞察の…

瑞々しい可能性

歩いていてふと見上げたガラス張りの高壁に目が留まる。しばし立ち止まって読んでみた。ここに書いてあることは、なにか、可能性という瑞々しさを私に感じさせた。ぜひ、読んでみて欲しい。

Why don't you stay a little longer?

sunset beach の余韻が冷めず、まだゆらゆらしている。もちろん脳内はこの曲だ。実は初めてだったのだ、ワイワイと友達同士で海に行くことが。これまでは家族か恋人としか来たことがなかった。しかもほとんどが朝イチで出発して夕方早くには撤収するパターン…

鍵は必ず何かを開ける

タイトルの言葉は、最近観た映画にあった台詞である。とても印象に残った言葉だ。まずは鍵を見つける。そしてそれに合う鍵穴を探す。鍵穴はひとつとは限らない。意外なほど身近にあるかもしれないし、何年かかってもみつからないかもしれない。しかしなかな…

Traveler's Spirit

可愛い子には旅をさせよ、とはよく言ったものだと感心する。振り返れば私が初めて海外へ行ったのは8歳の時、両親は同行せず、既に1人だった。今思えば驚きの度胸である。行かせた両親の度胸も同じく。けれど当時の経験は今でも覚えているし、私のベースに大…

右脚の記憶

風呂上がり、部屋の中が蒸し暑いので窓を開け放ち、夜風に涼みながらこんなことを思う。先日、受診した整形外科。右足首がずっと痛んでいた。ずっとずっと。ただ理由もわからないので放置していた。立ち方のせいだと思っていた。けれどレントゲン写真を見た…

my own classic

自分の原点に還ることは容易ではない。それらはたいてい世間の評価や環境や理想によって歪曲されていて、自分でさえ気づかない。ただきっと意識の底には自分の核があって、たとえそれが自分の認識と違うものでも偽りなく受け入れられたら、人生の多重性にク…

水曜日は気が重い。

水曜日は気が重い。週の真ん中だからではない、毎週放送されている、とあるドキュメンタリー番組を観てしまうからだ。何も観たくて観ているわけではなく、放送直前まではその存在すら覚えていない。ただ、チャンネルを替えずにいると気がついた時には始まっ…

もしも、そんなワイナリーがあったら。

名前も知らないような森の奥に、ワイナリーがあった。市街地から電車で45分、更に1時間に1本しかないバスで20分かかる。そこは緑の香りが濃く、静かで平和だった。実は架空の場所だったと言われてもおかしくないくらい、完成された美しさと澄み渡った空気。…

日本語=母国語

世界には、文字を持たない民族がいる。それは自分たちの歴史や伝統、宗教などを守る為の手段であったり、教育の体制や環境からの理由であったりするだろう。日本は小さな島国であるからか、ほとんど民族が混在することなく独自の文化を築いてきた。日本語も…

Can anyone hear me?

こういう時に限ってあまり誰からも連絡が来ない。いや、実際はそんなことはない、そんな気がするだけだ。ここ10日ほどで3つも4つも大きなことが動き出したようで、目まぐるしい日々である。とにかくバタバタしているのであっという間に過ぎて行く毎日だが、…

C mollのピアノ線

過去の切り取られた1枚はどれも笑顔だ。共に騒ぎ、語り、共有した時間を物語る。しかしその最も輝かしかったであろう時代に私はいない。どんなに探しても見当たらないのだ。だから私はいつまでも共有できないままだ。そんな過去の積み重ねである今に、悔しく…

恵比寿、夕暮れ時。

先日はスタジオを借りて、ひとり篭ってピアノを弾いた。指が鈍っていて全然上手く弾けないのだが、それでも夢中だったのだろう、時間が経つのがあっという間だった。その後、恵比寿へ。友人とお茶を飲みながらゆっくり話すことができた。友人と呼んで良いも…

蝶と黒うさぎ

1年前の今日はとても大切な日だ。もう誰も覚えてないかもしれないけれど、あの日も晴れていた。この1年さんざん考えて、迷ったり揺らいだり、噂や誤解に翻弄され、ふさぎ込んでみたり誰かに相談してみたり、挑戦したり諦めたり試行錯誤を繰り返し、沢山泣い…

亡き王女のためのパヴァーヌ

音感に対する見識は幅が広いが、私に少しでもあるとすれば、それは生まれ持った才能ではなく訓練によって身についたものだと思う。小さな頃、師事していたピアノの先生は音楽学校の講師をしていて、高校生や大学生と同じように私を扱った。特に理論や聴音に…

fly firefly

バースデーソングならJUDY AND MARYのが1番好きだ。誕生日も近いので、今日は本音を赤裸々に綴ってみようと思う。ここ2年近く、私は自分の中にある女性性というものをできるだけ抑えてきた。もともとあまり女性らしさがないというのもあるが、対人関係などに…

お兄ちゃん

山奥の深い森の中に、我が家はあった。電気もガスもない時代のことだ。隣家とは少なくとも数百メートルは離れていて、夜になると恐ろしく暗いが星空が美しかった。私は両親と、兄と暮らしていた。原っぱの中にぽつりと建てられた木の家は想像よりも全然寂し…