10月、雨、その証。

ある作家と音楽家の対談を読んでいたら興味深い一言に出会った。
『耳が良くないと、面白い文章は書けない』
表現力や描写、テーマとは別に、文章には心地良いリズムが必要だと。そのリズム、流れがないと物語は前に進んでいかず、そこに書かれていることも読み手の内側には入って行けないということだ。
この感覚は、直感的に理解できる気がした。

雨だれのように自然発生的な音にも、不規則なリズムがあり、ある種の心地良さを感じる。
人は直感的にそのリズムに反応し、自然に受け入れたり違和感を覚えたりするのだろう。
空気や流れを読むことは、体内のリズム感を鍛えることと繋がっているかもしれない。

少し肌寒い10月の路面は、雨に濡れている。
真夜中、不規則に変化していく雨音に耳を澄ませると「内」と「外」を強く感じた。
いつだったかの記事に書いたように、室内にいる私は、雨のベールに守られているようでなんだか落ち着く。そして今、あなたも「内」にいることに安心する。控えめなぬくもりを帯びたリズムが加わり、私は優しい流れに身を任せる。それは懐かしさに似た心地良さで、雨にも増して私を包む。

手元には、一枚の紙きれだけがその証となって残り、密やかに佇んでいる。
そこに書かれた言葉たちがリズムとなって、新しい物語が生まれますように。
そっと、そう願ってみた。
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