ginger ale

いつからか、境界線のあっち側に行った気がしていた。
それを私は辿り着くべき場であり、辿り着いた場だとも思っていた。
社交辞令的世界観は、私にあどけなさを失わせようとしていた。
しかし未だ、幼さと成熟の狭間でくすぶっている自分がいる。
次々に弾けるソーダ水の泡。
ふと後ろを振り返ると、私の足跡はちぐはぐで非効率的な軌跡を残している。けれどじゃりじゃりした思い出たちも、何故かいびつな愛おしさを醸し出していて、裸足で歩いてきたにもかかわらず今は痛みを感じない。
歩幅は小さくても、費やした歩数は自分を裏切らなかったということかもしれない。

とろける蜂蜜色の海は、濃いジンジャーエールのようにそのグラスに注がれて、酔えない私を慰める。
扱いづらい個性を捨ててまでもステレオタイプに収まるのは不要。
今ここにあるものを大人ぶって手離すのも不要。
こういう少しのフォローと秩序のある世界が必要。
慎ましく、でも自由に自分が自分でいられるための世界。
小さいけれど、そばにあるものを大切にできる世界。
波打ち際で弾ける泡。
反対側に昇る、乳白色の上弦の月
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