右脚の記憶

風呂上がり、部屋の中が蒸し暑いので窓を開け放ち、夜風に涼みながらこんなことを思う。

先日、受診した整形外科。
右足首がずっと痛んでいた。
ずっとずっと。
ただ理由もわからないので放置していた。立ち方のせいだと思っていた。
けれどレントゲン写真を見た先生から意外なことを言われた。
昔、右足首に大怪我したことはないかと。先生によると、骨折かそれ以上の怪我をして、それがやや不自然に治った跡があると。確かに写真を見るとそういった形跡がある。
しかし私には、全く覚えがない。
先生は、その後遺症の違和感や痛みの可能性が高いと言っていた。日常生活としては問題ないが、もし本当に治そうとすれば大がかりな手術になるそうだ。


「忘却」という機能を私は、うまく使いこなせているだろうか。
無理やりに潰して押し込めて、自分をごまかして、騙して、そうして圧迫していけば、きっといつか消えていくだろう。
あの強烈な衝動も、痛みも。
いつまでも聞いていたい声も、残酷な一言も。
私の右脚の記憶はきっと一生戻らない。
それでも失った何かの跡を抱えていくのだ。
残像は私の心をノックする。
神経質に。
絶妙なタイミングで。
その度に揺さぶられる境界線。
私の心をノックする、あなたは誰ですか?
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