2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

夜の唄

夕方のこと。テレビから懐かしい曲が聴こえてきた。これは父が大好きだった曲だと突然思い出した。遠い昔、洋間にあったボルドーのグランドピアノ。ウィスキーを片手に薄暗い間接照明の元、父は夜にピアノでこのメロディーをなぞっていた。私は耳を澄ませて…

観覧車に乗せた忘れ物

私は、自分の不甲斐なさと闘う。もしも明日私が消えてしまっても、誰も困らなければ良いと思う反面、誰かには気づいて欲しいとも思う。居場所に依存したくないと思う反面、何処かに拠り所が欲しいとも思う。自分の不甲斐なさを噛み締める。奥歯が軋むほど、…

言葉論(デュークの庭編)

犬のデュークは散歩が好きで、飼い主が連れて行ってくれるお気に入りの原っぱがある。デュークはよくその原っぱへ行き、ハーネスを外して貰い、自由に遊ぶ。原っぱは陽当たりが良く草の匂いと穏やかな風に満たされ、妨げ無く走り回ることが出来た。飼い主は…

prelude

例えば、指と指が絡み合うだけで溢れ出す感情が在る様に、音と音が絡み合う事で何処までも深まって行く音響的調和が在る。時間を追いながら編まれて行く主旋律は、時間が止まったかのごとき心地良さを同時に紡ぐ。みぞおちを疼かせる渦。脳内神経を溶かす真…