2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

とある小さなクロニクル

色褪せた庭に、そっと花を植えてくれた人がいた。光と影のバランスが変わり、色と色の縁取りが際立つ。Cm7のような心地良い響き。ジョハリの窓が開いていく。全ては必然で、寸分の狂いもなく天体観測のように廻り巡る。けれど其れは、あたかも偶然のように巻…

『人魚 』 2

そんな彼も今は何処にいるのかわからない。けれど夜な夜な繰り広げられた、どうでもよくて、とりとめもなくて、根拠もなければ結論もない会話は今も思い出す。「人間がサルから進化したって本当かしら?」「僕は違うと思うよ」「どうして?」「歴史の教科書…

『人魚 』1

ジャズが流れるさびれた酒場。ところどころ、裂けた布地が繕ってある深紅のビロード張りのソファ。安い酒の臭い。ガラスの灰皿。ジッポのオイル。甘い煙のシガレット。私は全身ずぶ濡れで此処に辿り着いたが、この黒くて身体に張り付くワンピースも髪の毛も…

Light

言い忘れたことがある気がして、それを捜す為にライトをつける。けれどそれは人工的採光。 薄ぼんやりしていても、自然発光には無言で共有できる感情がある。そして夜の光は、どれも潤んで見える。俯瞰している私の、心の状態が写されているからだ。なんでも…