2016-01-01から1年間の記事一覧

Life

流れる川に足を浸して、繰り返す都会の喧騒と静寂を私は観ている。送電線が這う空は真冬の高さ、月が近い。ただ早く過ぎて欲しいと思うような日々も、ほんのささやかなことだけの毎日も、こんな何気ない日々の営みが重なって、人生があるんだと、小さなこと…

オルゴールを巻き戻せば。

時間のネジを巻くことに急いでいた。早送りの世界は艶やかに感じた。誰もが早足に見えて、私の歩幅は小さかった。だから気づかなかったのかもしれない。止まった時間を手繰り寄せて。オルゴールを巻き戻せば。あの頃のような切ない響き。濃い夜の蜜の味。逢…

鍵と錠

濡れている窓を見て、雨の存在に気づく。また、音もなく世界がゆっくりと濡れていく。ある本にこんなことが書いてあった。「言葉は情報を伝える道具であり、人間関係を円滑にするための道具である」。「しかし言葉の本質は別のところにある。この世界を認識…

深く深いメロディー

かつて何かを捜していた。それは長い迷宮の先にあるのか。それは瓦礫の中に埋もれているのか。暗くて孤独な町の路地裏で、寒さに震えていた。貴方はそんな夜の町に灯ったあかりのようだった。真夜中に突然降った、流れ星のように美しかった。私の町には色が…

sea shore

気づいたらひとりだった。海岸線に沿って歩いて、かつての自分をなぞった。 誰もが心の中に深い海を抱えている。寄せては返す波のように、気持ちは泡立つ。攫われた言葉たちが、もう戻らない時間を呼び起こす。貴方の中で、私はあまりに小さかった。此処は何…

眠りのエトセトラ

そもそも「眠り」に心地良さを含めて味わえるようになったのが最近のことであるから、そのせいかもしれない。しかしそれにしても私の眠りの周りには、シンプルかつ機能的なものしか並べられておらず、改めてこうして眺めるとなんとも魅力に欠けて見えるので…

33

恥ずべき人生だった。それでも一生懸命だった。こんな私に「明日」は来ないのかもしれない。もしも来なかったら、長い長い懺悔の旅へ。どんな言葉でも言い表せない想いを抱いて。もしも来たら、言葉より行動で。とても語りつくせぬ想いを抱いて。愛おしさを…

mirrors

ずっと心を占めていた命題があった。それは日々、私の思考の中に漂い存在感を放ち続けていたにもかかわらず、私は見えないふりをしていた。それに拘ることが馬鹿げているような気がしたからだ。しかしそれは、いつも私の中にいた。私を悩ませ、苦しめた。も…

霜降る季節、滴る清流の飛沫を浴び、日 高く昇り出づる頃、いにしえの社に還り着く。諸行を見給わりし大樹の下、補完されし情と業と輪廻を仰いで、此処に天命をひとつ授かる。其れは麗しき幾千年の記憶。其れは美しき約束の地。よもや詞なき満ちし思惟は、ま…