モノトーンが反転する世界

夢や記憶に関するテーマの作品が意外と好きである。
映画で言うと、マトリックスやバニラスカイ、インセプションあたりは何度も観ている。日本の作品ならパプリカの世界観も興味深い。
一番最近のものでいえば、ダニーボイル監督のトランスは面白かった。

こういった作品の魅力は、自分が今いる現実にもあてはめて考えられること、その真偽を確かめる術がないことだ。
夢に関しては現在の科学でも解明されていない点もあるのだから、その境界線にあやふやさを混ぜて妄想を膨らませると楽しい。
もしかしたらいつかある日、オセロのように夢と現実がひっくり返る何かが起こるかもしれないし、その可能性は全否定できないのである。

フランスのBD作家、マチューの代表作である「ジュリス•コランタン•アクファク」は、テーマと視点、美術的センスから見て非常に私を虜にする作品である。
残念ながら邦訳されておらず、インターネットで探してもなかなか手に入らないので、まだ3巻しか購入できていないのだが、ぜひとも全巻揃えたいところだ。
私が持っている3巻は、主人公のアクファクが天井症候群になり、夢から天井が失われてしまう。夢の中で迷子になった彼は、脳の地図作成部門に住所を教えてもらうべく、夢の図書館を降りていく。
夢がテーマではあるのだけれど、夢の世界というものを無機質で不条理な、ループ感と混沌にまみれたものとして捉えている点が、私の考え方と似ている。
夢はいつもふわふわした優しいものではなく、困惑と若干の残酷さの中に存在している気がする。
そしてそれは現実の世界と紙一重に思える時もある。
自分だけが夢を見ている世界、自分だけが覚醒している世界。


これからも夢や記憶に関する好奇心は続くであろうから、このテーマの記事はまた書くことがあるかもしれない。
そしてその時は既に白と黒が反転しているかもしれなくて、そう考えるとワクワクする。
普段は思いきり現実の中に生きているからこそ、そんな妄想で圧を逃がすのも悪くない。
写真はジュリス•コランタン•アクファクの中から。
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