sea shore

気づいたらひとりだった。
海岸線に沿って歩いて、かつての自分をなぞった。 
誰もが心の中に深い海を抱えている。
寄せては返す波のように、気持ちは泡立つ。
攫われた言葉たちが、もう戻らない時間を呼び起こす。

貴方の中で、私はあまりに小さかった。
此処は何処だろう。
満ちていく潮。
隠れていく稜線。
行く場所も還る場所もない。
美しい言葉も旨い言葉もない。
どんな言葉を使っても届かない。
歩き疲れて、
泪も枯れて、
立ち止まって、
膝から崩れて、
このまま動けなくなったら、
海で洗って、砂に埋めて、
何も言わない貝になれたらいいのに。
ただ向こう岸から、
貴方の幸せを、
祈る貝になれたらいいのに。