gift

気がつけば、今日はクリスマスだった。 
小さい頃の様な興奮を、いつからか忘れていた。
それでも無条件に部屋に射し込む光の一筋に、祈らずにはいられなかった。

幾多の泪の夜に、私の経験があった。
幼さの残る口唇に、私の背信があった。
誰も知らない家出に、私の後悔があった。
拒否された背中に、私の悲哀があった。
其れ等は全て小さな古い箱に入って、いつからかそこに置かれていた。
深い優しさに、私の癒しがあった。
温かくて大きな手に、私の安堵があった。
柔らかに訪れる時間に、私の至福があった。
紡ぎ出される台詞に、私の夢があった。
其れ等は全て小さな新しい箱に入って、そっと置かれていたのを見つけた。

もしもあの木の根元から箱を選べたら。
箱を握りしめて外に出られたら。
私には見たい景色がたくさんある。
長い月日をかけて育みたいものがある。

聖しこの夜。
陽の光は瞬きをしているうちに夜街灯に変わっていた。
私は大切な事に気がつかなければならない。
一生忘れられないクリスマスだった。