Light

言い忘れたことがある気がして、それを捜す為にライトをつける。
けれどそれは人工的採光。 
薄ぼんやりしていても、自然発光には無言で共有できる感情がある。
そして夜の光は、どれも潤んで見える。
俯瞰している私の、心の状態が写されているからだ。
なんでもないのに涙が出るのは、何かを思い出すからだ。
遠い昔の、古き良きなにか。
蛍光灯でもLEDでもなく、ガス燈に、蠟燭に宿るなにか。
何も感じない人などいないのだろうけれど、何かを感じさせてくれる人に、委ねたい安心感。
私の、言葉にできないことを、焦らなくていいと思える空気が、私を重力から救ってくれる。

心の奥には、硬い殻のたまごみたいなものがあって、その中は深く暗い夜の濃さによく似ていて、静けさに満ちている。
中にいる眠ったような私は、ちっぽけで今にも消えてしまいそうなんだけれど、俯いた顔を上げれば、プラネタリウムのように丸い空が広がっていて、ぼんわりとした僅かな光がいくつかあって、眩いほどじゃなくてもその柔らかい光を愛おしく思えるのは、きっと何かを思い出させてくれるからだ。
私が信じたい何かを。

Aをつけたら、一筋の光のような、a light.
BをつけてLをRにかえたら、安心できる空間にいるような、bright.
LをとってNをつけたら、たまごの殻の中の、night.
Sをつけたら、それだけで力強くなるような、lights.
SとNが磁力で引き寄せ合うならば、夜にこそ注がれる光はどれくらい美しいだろうか。
夜が光を際立たせる。
光が夜を彩る。

私は、
自分の欲ゆえに急に襲いかかる不安をなだめて、
信じたい何かを確認して、
NとSの磁力のことを考えて、
いつ縮まるかわからない距離の恐ろしさを振り払って、
捉え方と視点の問題だからと落ち着かせて、
丸い空に浮かぶ愛おしい自然発光の光を、
ぼんわりとした優しい光を、
何かを思い出させてくれるその光を、
夜の中から真剣に見つめている。
潤む眼差しで、
たまごの殻の中から真剣に見つめている。
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