Le chocolat "Tokyo"

もうすぐ、上京して12周年になる。
長いなぁ、と改めて思った。
長いので、この都市に対する感覚もそれなりに変化しているらしい。

上京した頃は、網目模様のような複雑な乗り換え路線図に恐怖を感じ、新宿の人の多さに眩暈がした。
電車に乗っていると、流れる景色も乗り合わせた人達の顔も、あまりにも殺伐として無表情な気がして、なんとなくよそよそしさを感じた。
誰もが無関心であり、死角には孤独という魔物が棲んでいると思った。空気が汚くてギスギスしていて、いつも混沌としているこの街にいつか呑まれてしまうのかもしれない、とさえ漠然と思った。
けれどここはいつだって観光スポットであり、情報の発信地であり、絶えず人が出入りする場所だ。オリンピックさえ開かれるという華やかさと期待感も兼ね備えているのだ。
そんな東京のグレーな側面とカラフルな側面とを、すっかり忘れていたように思う。

2月は街のあちこちで、バレンタイン用のチョコレートが見受けられた。
小さなそれらは、ショーケースの中に美しくディスプレイされていて、まるで宝石のように優しく扱われていた。
見た目はフルーツやクリームより控えめだが、芳醇な香りや味の奥深さにおいて、常にスイーツ界の王様であるチョコレート。
地元に帰ることだってできなくはないのに、こうして今も東京にいる私は、案外この街が嫌いではないのかもしれない。
チョコレートのように一口齧ると溢れ出すような魅力がここにもあって、気づかない間に私はその虜になっているのだろうか。
甘かったり苦かったりを繰り返しながらも、きっとまだこの地で、やるべきことがあるのだという気がする。
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