猫が招くものとは

アルバイトを含め、これまで様々な場で働いてきた。もともと人と話すことが苦手だし、黙々と仕事をこなすのが好きなので、裏方がよかったのだ。飲食店なら洗い場でいいし、クリーニング店ならアイロン係でいい。なのにどこの職場でも「表へ出てくれ」「君は接客が向いている」などと言われ、レジやらホールやら営業的なことまで任された。お客さんと関わることを苦手だと思いつつも、業績は勝手にトップになる。「君が入ってから繁盛するようになった。招き猫だね」とあちこちで言われた。真偽のほどはわからないが、私が辞めた後にお客さんが遠のいて潰れてしまった職場はいくつかある。

得意なことと好きなことは、一致しないことがある。

先日、フリーダイバー福田朋香さんがドキュメンタリー番組に出演していたが、彼女の発言や生き方には興味を引かれた。彼女は華やかなモデルの世界から一転し、フリーダイビングの世界に飛び込んだ。すると瞬く間に頭角を現し、新記録を打ち出す。今も尚、ルーキーながら新記録に挑み、努力と挑戦を惜しまない。
フリーダイビングとはボンベをつけずに素潜りする競技で、身体が生命維持にのみ酸素を使う極限の時間の中、水圧で肺が潰れる深さまで静かに潜っていく。私からみると、とてつもなく恐ろしい世界だ。
しかし驚いたのは、モデル時代の自分は大嫌いだったと言っていたことだ。「自分の歩みたい道を歩いていなかったからだと思う。ダイビングをやってみて、こっちが本当の世界なんだと思った。私は海に入って、やっと息ができる」と彼女は言う。

好きなことは変えられないけれど、苦手なことは克服できるチャンスがある。

福田さんはモデルからダイバーへ、カメラのフラッシュという光たちから深海の底という暗闇へ、しかし彼女の光はその暗闇の中にこそあり、それを見事に見出した。
得意なことを無理に好きになろうとするのではなく、好きなことを突き詰めた時にネックになる部分を、克服していけばいいのだと思う。どこに自分の光があるのかは、人それぞれみな違うのだから
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