時速900マイル

急に肌寒くなってきた。
先日、友人と行ったプラネタリウムにて、こんなことを思い出す。
我が家には、メガスターを開発した大平氏監修の手作りプラネタリウムがある。手作りのわりには完成度が高く、部屋を真っ暗にすると思わず黙ってしまうほど美しい。
このプラネタリウムを作って初めて投映した時、それはもう7年も前のことだが、星の王子さまに出てくるこんな台詞を思い出した。
「だれかが、何百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花が好きだったら、その人は、そのたくさんの星を眺めるだけで、しあわせになれるんだ。」
それがちょうど冬だったせいか、私の中ではプラネタリウム→冬→星空という連想が成り立つ。
……大切なものが欲しいのに見つけていない人と、手が届かないけれど大切なものを見つけた人、どちらの方が幸福だろうか。
大切なものは、目に見えな大切なものが欲しいのに見つけていない人と、手を伸ばしても届かないのに大切
冬には何もかもが愛おしくなる。
冷たく澄んだ夜空。
それを覆い隠すような雪。
湯気のたつホットカフェオレ。
凍える手を温めてくれる手。
吐く息の白さ。
問わず語りの言葉たち。

時速900マイルのスピードで、真冬の北の地へ行ってみたい。
低く垂れ込める空の下、肩を竦め、両手をポケットに突っ込んで歩く。
イヤホンからは、ディストーションの効いたベースが響く。
帰る場所を探すように歩いて、深い足跡を残したい。
誰かの心にも残るような、そんな足跡を。
きっと人生は流星のごとく速すぎて、自分の辿った軌跡が、雪の上の足跡のようにすぐに消えてしまうかもしれないから。

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