into the 眠りの森 前編

人はたいてい様々な方法でストレスを発散させようとして、心のバランスをとるものである。
もともときっと誰にでも自己治癒力はあるのだと思う。それが高い人はストレス自体があまり溜まらなかったり、すぐに解消させることができる。低い人はストレスを感じやすかったり、発散させづらかったりする。しかし誰にでもそれぞれ、その自己治癒力をサポートしてくれるものがあると思う。例えばお酒や美味しいものを食べること、買い物や旅行、心を許せる人と過ごす時間や、趣味に没頭すること。何かしら自分の好きな事をしてストレスを発散し、心のバランスをとる。あるいはタバコ、ギャンブル、ドラッグなどに依存して、束の間でも忘れようとする。
私もこれまでは、美味しいものを食べたり、カラオケで思いきり歌ったり、友達と沢山おしゃべりをするなどしてストレスを発散させてきた。
しかしそういう自分を癒してくれるもののひとつとして、今年になって新たに発見したのが、森である。
私は、森ガールなどと呼ばれる格好はしていないし、これまでアウトドアもほとんどしたことがない。大人になってからは旅行も行けないような生活だった。だからこれまで「森が好きだ」と自覚したことがなかった。

しかし今年になって、家族と行った温泉宿の敷地内にある森を散策した時、驚くほど自分が癒されるのを感じた。植物にもたいして詳しくはない私、臆病者の私が、森の中で1人になると途端に心が自由になるのだ。何も怖くないし、むしろのびのびできる。そしてしばらくそこでぼんやりしていると、自分の内側が自然に満たされていく。こういう癒され方はとても不思議で、自然のチカラを今更ながら再確認させられた。やっと、人がなぜ登山やハイキングに好んで出かけていくのかがわかった気がした。

それからは、時間ができた時には森に行くことが多くなった。これまで何ヶ所か森に入って行ったが、驚くべきことに、地図もなく舗装もされてなく、外灯もないような森でも、私は決して迷わないのだ。直感のままに歩けば、必ず出たいところへ出られる。

ただ、郊外に出向くほどの時間が作れないので、たいていは都内の公園などに行くことになるのだが、木々が鬱蒼としていればしているほど魅力的だ。大自然に囲まれて風の音を聞くと、自分はとてもちっぽけな存在だなぁと痛感するとともに、それでも生きていてもいい存在なのかもしれないなぁ、とも思えるのだ。


私にとって森が自己治癒力を高めてくれることは、大きな気づきだったと思う。

これからは、もしも何かにひどく疲れたり傷ついたりしたら、お気に入りの森を散策してみるという選択肢がひとつ増えたからだ。


このストレス発散法の話、まだちょっと長くなりそうなので、次回へ続く…。