4 am

午前4時は、特別な時間である。
クラブにいれば、最高に盛り上がる時間。
恋人といれば、甘い甘い幸福な時間。
友達と飲んでいれば、語りに欠伸が混ざってくる時間。
悩んで眠れなければ、一番思いつめる時間。
夜勤をしていれば、そろそろ仕事の終わりが見えてくる時間。
夜泣きする子供がいれば、あやすのにヘトヘトになる時間。
高校生の頃は、朝日を見るために自転車を走らせていた時間。
空を見上げれば、うっすら白み始める絶妙な時間。

最近はこの時点に辿り着く前に寝てしまうことが多くなった。
だからごくたまにしか味わっていないのだが、私は午前4時が一日の中でも特別に好きだ。
例えば夜に書く日記やメールが感情的になってしまうように、一日の中でも人の思考回路や感情は刻々と変化する。
感情的な夜と冷静な朝の狭間では、インクブルーとオレンジが混ざり合う。ミスマッチかと思われるその組み合わせは、一瞬だけ綺麗な化学反応を起こす。どこか儚く危うい美しさは、印象的であり魅力的だ。


ある時、私は自分がとても損をする性格だということに気づいた。とにかくどんな感情も真夜中の人間のように強く感じ過ぎてしまう。
人一倍、感動したり悲しんだり緊張したりしてしまう。そのおかげで感情の振れ幅が大きく、気持ちの処理に時間がかかっていたのだ。
そんな性格では、集団の中で生きていくのが非常に大変だということに気づき、感情を自分の中に閉じ込めることにした。まわりと同じ程度に感じればいい。心の奥深くの柔らかい部分には何重にも蓋をしていればいい、と。
中目黒の桜を見ただけで泣いてしまう自分を、糺の森を歩くだけで心が震える自分を、サスペンス映画を観るだけで眠れなくなる自分が弱く恥ずかしくて、必死に隠してきた。
けれどそれから10年以上経った今、やっとこの自分の不便な個性を認めることにした。解放してあげることにしたのだ。強く感じることで子供みたいだと思われたとしても、これが私なのだから仕方ない。日々の小さな出来事にも、喜びたいだけ喜び、悲しみたいだけ悲しみ、感動したいだけ感動して、緊張しすぎるくらい緊張すればいい。我慢しなくていい。かっこつけて強がらなくていい。
そうやって自分に素直になることが、少なくとも私には大切なことな気がしたのだ。たとえそのせいでさんざん涙を流すことになっても、自分の蓋を開けないと見えてこない道がある気がした。
そんな自分の中でしかわからないような小さな変化は、しかしそう、もしかしたらインクブルーがオレンジへと変わる瞬間なのかもしれない。


秋は一番好きな季節。
私にも午前4時の特別な思い出がある。
冬になる前に、夜更かしをしてとっておきの時間を過ごしてみようか。
kaskadeの「4 am」は素敵なBGMになってくれるので、ぜひ聴いてみていただきたい。
There's a way ,there's a way I know
I know that someday we will surely find it